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「……ひとつ、話をしようか」
スゥ、と目を伏せるように閉じ、背後にある月を眺めるために体の向きを変えて、時音はぼんやりと月を見上げた。
「……あるところに、1人の女の子がいました」
「……」
「女の子は、自分が今いる世界が、住んでいた世界とは違うことに気づきました」
「そこは、今の女の子が生まれる前の女の子の世界でした」
「……つまり、その女の子は、時音ちゃんと同じように、たいむすりっぷをしてしまったってわけ?」
問いに頷き、再び話を続ける。
「その女の子は何かに導かれるように歩き、かつては村だった場所に辿り着きました」
「そこは荒れ地になっていて、草木は萎れ、田や畑は干からび、家は半壊していたり、粉々になっているところもありました」
沖田は静かに深呼吸すると、先を促すように時音を見つめた。
そのとき、ヒュウ……と風が窓から入り込み、二人の髪を静かに揺らした。
「……そして、ある全壊した家の場所を見た女の子は、全てがわかりました」
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