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楽器屋へ入ると、琴や三味線、笛や太鼓等が売られていた。
時音は、幼い頃から祖母の元で暮らしていた。
両親は不気味な右目を持つ時音を気味悪がり、母方の祖母に時音を押し付けたのだ。
祖母は本当にあの母の親なのかと疑う程優しかった。
人並み外れた要領の良い時音に祖母は何でも習わせていた。
昔から現代ものの楽器、演舞、華道、茶道、武道等様々。
どれも総て一通り出来るようになると、祖母は自分のことのように喜び、時音を褒めた。
だが、幸せな時も束の間だった……。
目を伏せ、店の中を歩いていると、少し黄緑っぽい碧の横笛が置いてあった。
「……これは……“夢見水月”…!
何故……これが此処に……」
「おっ!いらっしゃいお客さん。この笛知ってんのか?」
驚いていると、店主と思われる中年の男が聞いて来た。
「あの……これは何処で手に…?」
「ああ、道端に落ちててよ、珍しい色をしてるから拾ったんだが吹けねえんだ」
(当たり前だ。それは……、
・・
私達ではないと使えないのだから)
「これ、実は私のなんです。返してもらっても良いですか?」
「ん?いいぞいいぞ!
金になんねえからな!」
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