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「っは…はっ…っ、その、女の子を連れて行った…男の子、の、名…は……?」
心臓が大きく鼓動し、それと呼応するかのように頭が酷く痛み出した。
冷や汗が頬を伝い、顎に辿り着いてポタリと畳に垂れる。
沖田は頭の痛みに耐えるべく、拳をつくって出来る手の平の膨らみをこめかみに強く押し当てた。
時音はその様子を無表情で見ていたが、目を伏せた時に悲しみと申し訳なさそうな表情を一瞬だけ見せた。
「……もうこの話はやめにしようか」
「っ、待って。心配ないよ、こんな痛み、大したことないから」
その言葉とは反対に、頭の痛みは増していくばかりだった。
「……わかった。その痛み、もっと酷くなるけど、あなたは我慢出来る?打ち勝つことが出来る?」
沖田を見据える時音は、もう無表情ではなく、真剣な表情をしていた。
「っ僕を嘗めないでくれるっ?稽古でこんな痛みなんて慣れてるんだよ」
「……そう。ならいいよ。教えてあげる。その男の子の名は……」
ドクン……ドクン……
「惣次郎。女の子からはロウと呼ばれていた」
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