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放課後、時音は屋上で靴に穿き替えて手摺りの奥に座っていた。
体勢を崩せば死んでしまう。
ふと、右目を隠している黒い眼帯を触った。
別に怪我をしているというわけではない。
右目が異質なのだ。
時音は容姿と知能と体力と運動神経全てが、人並み外れている。
知能では英検、漢検一級、チェスは大会を最年少で優勝しギネス記録に名を残し、囲碁、将棋5段エトセトラ。
英検と漢検しかやらなかったのは、この学校にあるのがこの二つだけだったからだ。
面倒なことなど一々することはなかった。
体力や運動神経では、武術、ほとんどのスポーツを全国優勝という、優秀な成績を収めている。
華奢な身体の何処にそんな力があるのかと思う程。
そして容姿。
何度もスカウトされているが無視で、今ではこの街で時音を知らない者などおらず、有名である。
容姿、知能、体力、運動神経。
それらは皆、この右目に関係しているのだ。
鞄から護身用の二つの武器を出した。
見た目は普通の綺麗な扇だが、実際は鉄が仕込んであり先端の部分からは切れ味抜群の鋭利なワイヤーが出て来る仕掛けとなっている。
名前は『桜(サクラ)』。
もう一つは長く艶やかな漆黒の鞭。
見た目は普通の鞭だが、柄の部分を一回回すと猛毒が塗られてある針が出て来て、二回回すと中でも酸性の強い硫酸が出て来る。硫酸は遠距離からの攻撃に使う。だけど、毒や硫酸はあまり使わない。そこまで使う相手がいないのだから。
名前は『夢(ユメ)』。
名前の理由は扇と鞭の文字をとって、桜が「オウ」で夢が「ム」のため。
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