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辺りはすっかり真っ暗闇に包まれ、遺体の発見された現場には数人の捜査官を残し、俺と三木は山小屋に宿泊しようとしていた。
主人の話しじゃ、被害者もその夫もこの一週間では見掛けていないらしい。
数棟並ぶ山小屋が、ポツリポツリと明かりを灯している。その光景は、深淵へと我々を導き招く、暗黒な先の何かを彷彿させる……勘が物語る。
この事件は、一筋縄では行かない物だと。
細胞に染み渡る。数年前の未解決事件の様に、今回もお蔵入りしてしまうのではないかと。
女性か…。
「三木、携帯貸してくれないか?」
「あ、はい。どちらへ?」
「ちょっと、家のかみさんにね」
三木から携帯を受け取り、自身のポケットから自分の携帯を開き、かみさんの携帯番号を画面上に出した。
「…携帯、持ってんじゃないっすか。」
「俺のはムーバだから、山ん中は弱いんだよ。」
「ったく、せこいなあ。」
ふてくされる三木。それを横目に、俺は唇に人差し指をあてる。
三木はスタスタと台所の前まで行き、煙草を取り出した。
プルルルルルプルルルルル
『ガチャ』
「いやあ、すまないね、俺だよ」
「……ちょっと、あなた何時だと思ってるの?それにこの番号、誰の携帯?」
「ほら、覚えて無いか?今年の夏に一緒にバーベキューをやった、暑っ苦しいデブの三木だよ!」
一瞬、歯を磨く三木の動きが止まった様にも見えるが、ま、問題は無いだろう。
「まあ、あの太っている方ね!…で、その方の携帯から一体なんの用かしら?」
「いやあ、本当にすまない、実はね、捜査が難航してて今日は帰れそうも無いんだよ」
「あら、それは大変ね、ご苦労様。」
「いや、ははは……、それとな、ちょっとお前に聞きたい事があるんだよ。」
「ふぅん。珍しいわね、何かしら?」
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