刻印

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母さんが亡くなったか…。今いちパッとしないんだよな。 溺死、その父さんの言葉を聞いた時、正直、驚きはしたが、そこまでなんだ。 姉ちゃんはどう思ってるんだろうか…。 直ぐに浸透して来て、悲しくなれたのかな?僕には、きっと母さんの遺体を拝むまでは、その気持ちは現れない。 どうしても信じられないんだ。一昨日、電話で会話したばかりの母さんが、溺死なんて。 『亡くなった』その言葉の意味も理解も出来てる。けど、全くと言っていい程に実感が湧いて来ないんだ。 ソワソワした感じはある。でも、それだけなんだ。 「姉ちゃん、なんで母さんは溺死したんだろう?」 「うん、私もそれを考えてみたんだけど、母さんって、泳いだりとかとは無縁だったよね」 「うん、ってか、運動的な事とは無縁な感じだったと思う」 「そうね、私もそう思う。なら、何故母さんは溺死を?」 「うん、おかしいと僕もずっと思ってた。」 目の前の信号機が赤になり、姉ちゃんはちょっと強めにブレーキを踏んだ。 少し前のめりになりながらも、僕はずっと考え続ける。 川?海?どちらにしても、母さんが父さんと一緒に行動しないってのも変なんだよな。 父さんは、泳ぎが得意だった。小さい頃から僕は鍛えられていた。その父さんが、母さん1人を助けられないなんて思えない。 なら、1人で?
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