刻印

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高速道路の料金所を過ぎた辺りから、フロントガラスに打ち付けて来るポツポツと弾ける水滴。 ワイパーを回し、視界の悪さに自然と目が細くなる。 助手席を横目に、酒臭い弟がスヤスヤと寝息を立てているのが分かる。 「ったく」 お気に入りのショーンポールを流しながら、ハンドルを握る手が微かにリズムをとり出す。 段々と雨音も勢いを増して来て、自然とボリュームを上げる手も伸びる。 「視界わるっ」 いつの間にか、天候は、ついつい口を開く程の豪雨へと変わっていた。 それにしても、母さんは一体なんで……父さんの話しによると死因は溺死。 溺死なんて、不可解よ。戻って来たら話すと父さんは言っていたけど、謎。 実感が湧かなさ過ぎて、悲しみなんて無い。むしろ、本当なの?って思う疑問すら浮かぶ。 溺死って。 普通じゃありえない。だって、1人で海へ?川へ?何しに?そもそも足を滑らせる様な危険な場所に用事も無くて行く? ならば、父さんも一緒だった?だけどそれなら溺死なんてあり得ない。 父さんは泳ぎが得意なはずなんだ。遠い昔の、その力強い勇姿が、今も私の記憶に残っている。 じゃあ、母さんは誰と?
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