4人が本棚に入れています
本棚に追加
高速道路の料金所を過ぎた辺りから、フロントガラスに打ち付けて来るポツポツと弾ける水滴。
ワイパーを回し、視界の悪さに自然と目が細くなる。
助手席を横目に、酒臭い弟がスヤスヤと寝息を立てているのが分かる。
「ったく」
お気に入りのショーンポールを流しながら、ハンドルを握る手が微かにリズムをとり出す。
段々と雨音も勢いを増して来て、自然とボリュームを上げる手も伸びる。
「視界わるっ」
いつの間にか、天候は、ついつい口を開く程の豪雨へと変わっていた。
それにしても、母さんは一体なんで……父さんの話しによると死因は溺死。
溺死なんて、不可解よ。戻って来たら話すと父さんは言っていたけど、謎。
実感が湧かなさ過ぎて、悲しみなんて無い。むしろ、本当なの?って思う疑問すら浮かぶ。
溺死って。
普通じゃありえない。だって、1人で海へ?川へ?何しに?そもそも足を滑らせる様な危険な場所に用事も無くて行く?
ならば、父さんも一緒だった?だけどそれなら溺死なんてあり得ない。
父さんは泳ぎが得意なはずなんだ。遠い昔の、その力強い勇姿が、今も私の記憶に残っている。
じゃあ、母さんは誰と?
最初のコメントを投稿しよう!