4人が本棚に入れています
本棚に追加
高速道路のインターチェンジに差し掛かる頃、先程までの豪雨は嘘の様にスッキリと晴れ上がっていた。
「久しぶりにきれいな空だね」
都会に住む私達の視界には、なかなか澄んだ星空なんて入っては来ない。
私は、弟に投げかける。
「そだね」
誰かが言った。『東京には夜空が無い』あながち、そんな言葉も鵜呑みに出来そうになる。
それ位、この星空を眺めるのは久し振りなのだろう。
私達の乗る車は一般道へと下り走行する。見据える先は山ばかりの景観、周囲は田園が並ぶ、巨大なパノラマの様だ。
「姉ちゃん、喉、渇かない?」
「ん、そう?少し待ってね、コンビニ見つけたら入るから」
「う、ん、」
弟は、また、気持ち良さそうに伸びをする。なんか、ズルい。免許取ってないから仕方無いんだけど、イラッとする。
「拓真(たくま)、タバコ一本ちょうだい、姉ちゃん切らしちゃった」
「あいよ」
拓真は、私にメンソールのタバコを差し出す。それを手に、口元へ運ぶ。
「火っ」
「ん?」
「火っっ」
少し顎を前にしゃくらせながら強気に。
「ああ、火ね。」
拓真は私の加えるタバコに、ホストさながらのやり口で火を着けた。
最初のコメントを投稿しよう!