刻印

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       2 いつだって、110番は嵐の様に鳴り続けている。 うんざりする程、毎日毎日が窃盗、傷害、交通事故と、事件、事件、事件の応酬だ。 下らない痴漢や猥褻罪などの犯罪を犯す馬鹿が、我が署内からは出ていないのは救いだが、警察官全体のモラルが下がっている事には変わりないのだろう。 しかしな、そういうモラルの無い奴らのお陰で、俺達みたいに一生懸命頑張っている者まで、肩身の狭い思いをしなくてはならなくなる。 巻き込んでしまうそういう馬鹿共には、極刑が在っても同じ警察なら誰も文句は言わないだろう。 ―今回の事件は、1つの110番通報から始まった。 女性の水死体が上がったらしい。 現場へ急行してみると、既に何台かのパトカーが停まっているのが視界に入る。 駐車場に車を止め、運転席の扉を開き、地に足を下ろす。 「あ、芳賀警部、お待ちしておりました。」 若い捜査官、三木が俺を招く。 駐車場と山森を挟む緑色のフェンスを抜け、山小屋までへのハイキングコースへと移動する。 大自然に囲まれた、標高1400㍍程の山。ここらは、渓流釣りの名所として知られ、また、沢登りの名所でもある。 近年はロッククライミングの種類でシャワークライマーなども訪れる様になっていた。 実に30分程の時間を掛けて山小屋へたどり着き、そこから登山道へと今度は下って行く。 大森林の深緑に、足場の悪い岩場に、息も切れ切れに要約の現場に辿り着いた。 黄色い、敷居を引かれたテープをくぐり抜ける。 毛布にくるまる仏を確認し、ありきたりな現況を耳に入れる。 何故?ここで? 発見したのはクライマー、あちらで事情聴取を受けている2人組みの若いカップルだ。 あの若いカップルの装備を目の当たりにした後、水死体に視線を戻せば自ずと解る。 この水死体は、クライマーでは無かった。次に、渓流釣りを女性が1人で楽しみに来るだろうか? 中にはいるのかもしれないが、そうそうお目にかかる事は無いだろう。 もう一つ、女性1人での登山道とは考え難い。そして、山小屋の予約はこの一週間は殆ど無く、主人も利用客の顔は鮮明に覚えていると言う。 …そして、この水死体には外傷が無い。
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