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その時、屋上の扉が開いた。
現れたのはアヤメと同じく制服姿の少女。
「さっそく一人目のお出ましか」
相手はどこぞの留学生かと思うような金髪碧眼で、ベルバラのように笑えるくらいの巻き毛だった。
その手にはグリム童話の死神が持っているような、体よりも大きな黒い鎌。
可憐な少女には全くもって不釣り合いな代物だ。
「それがおまえの鬼か」
アヤメは三日月よりも細く細く、ニタリと笑った。
相手も華やかに煌びやかに、狂気を宿して微笑む。
「そうです、これがわたくしの相棒。それでは始めましょうか、極上の暇つぶしを」
「ああ、最高に最低な宴をな。行くぜ夜薙!」
(わかったよ。でもちゃんと僕を使ってよね)
月がケタケタ笑うような音を立てて、アヤメの剣が唸った。
校舎内の空気はコールタールのように粘っこかった。
腐った人参と鉄錆の混ざり合ったような悪臭が充満している。
周囲を漂う血煙りのせいだ。
廊下にいた少女たちをアヤメはあっさりとバラしていった。
白い足で駆けるたび、長い黒髪が闇を引きずるようについてくる。
夜薙が耳元で、とあるロック歌手の曲を口ずさんでいる。
(♪~ We are routine Joker! Kaleidoscopeを善か悪か哲学するなんて、なんて、なんて、Nonsense!)
「ひっ」
戦意を喪失した少女が一人、床の血溜まりに滑りそうになりながら逃げ出した。
「馬鹿が。今回のシナリオ理解してねぇのかよ」
アヤメの髪がざわめく。
華奢な足で、とん、と、スキップでもするような軽さで床を蹴る。
瞬間、神猛るスピードでアヤメの体は跳躍した。
剣が逃げる少女の胸を貫く。
アヤメは唇の片方を釣り上げた。
「ぐっばぁ~い」
少女は血を吐き、アヤメはその体を蹴り飛ばして剣を引き抜いた。
校舎内は青い霜のような月光に照らされて、海の底にいるようだった。
その中を少女たちの残骸が転がっている。
赤黒い粘液が飛び散り、溜まり、引きずられ、天井、壁、床、その全てが、芸術は爆発だとでも言う奴の作品みたいになっている。
鎌を持った少女を手始めに、アヤメは出くわした相手全員を斬り殺してきた。
自分は無傷のまま、それが当然とでもいうように飄々としている。
「うーん、あらかた殲滅しちまったな。こっから先は自分から探しにいかねーと」
(かくれんぼで鬼に見つかっちゃった子は、頭からとって喰われちゃうんだよね~)
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