第八六一四話

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アヤメと夜薙が辿りついたのは体育館だった。 かつては人間だった物体がとっ散らかっている。 中央には赤毛の少女が立っていた。 ここでの戦いの勝者は彼女のようだ。 少女の右腕には赤いウジ虫のようなものがびっしりとまとわりついている。 床まで届きそうなほど巨大化した腕と、ドラゴンみたいな黒い爪。 入口に寄りかかりながら、アヤメは冷めた目で呟いた。 「ぬ~べ~の鬼の手って、右手だったっけ左手だったっけ」 (さぁ? でもD.Gray-manの主人公は左手だったと思うよ) 「あれは鬼じゃねぇだろ」 (能力者なんてみんな同じだよ~) 赤毛の少女がこちらを振り返る。 短い髪は燃え上がるように逆立っていた。 顔は返り血でべたべたのぐちゃぐちゃのどろへどろ。 目は瞳孔が開ききっていて、完全にイッてしまっている。 アヤメは薄く笑い、寄りかかっていた体を起こした。 「ページ数的には中ボスか」 (そうだねぇ、ここはそこそこ盛り上げてサクッと行きたいね) 赤毛の少女はひび割れた声で吠えた。 ビリビリと体育館の窓が震える。 「ジブン、人間、ナル! 宇宙、手ニ入レル! 人間ノ頭ノ中、色ンナモノ、爆発、消滅、衝突、ブラックホール、星、銀河、タクサン! ジブン、無限ノ世界、欲シイ! “あちら”側、行キタイ!」 「あーハイハイ。あんたの夢はわかったから、さっさと展開進めようかー」 アヤメはその跳躍力で一息に少女に斬りかかった。 赤毛の少女は黒光りする爪で跳ね返す。 彼女が腕を振り回す度、ウジ虫が降りかかってきて不快なること極まりない。 耳元で夜薙が歌い出す。 (♪~ Sully! 世界は廻る、Sully! 世界は廻る、輪廻を貶めるのは、いつだって自分の手) 「おまえ本当に黙ってる時間とかねぇよな」 (えへ、夢見る少女を絶望させてブッた斬るにはぴったりの曲でしょ?)
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