第八六一四話

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赤毛の少女が豪快に腕を振りまわす。 それを受け止めようとして、アヤメの剣が吹き飛んだ。 「こんのっ! 馬鹿力っ!」 アヤメ自身も死体の上に叩きつけられた。 剣は回転しながら床を滑り、壁にぶつかって止まる。 赤毛の少女は止めを差しにかかった。 しかしアヤメまであと一歩というところまで迫った時、何かが彼女の足を絡めとった。 「ブァ?」 闇が足元で蠢いている。 月灯りだけでは正体がつかめない。 「ヴ、ァ、ア?」 「早くしろ、夜薙!」 赤毛の少女が顔を上げた時には、アヤメの手に吹き飛ばされたはずの剣が握られていた。 少女は瞳孔の開ききった目を真ん丸に見開いた。 (僕ってば本当に自由闊達、変幻自在、とぉっても素敵に無敵だよね♪) 夜薙がきゃらきゃら笑う。 アヤメは再び手にした剣で、鬼の腕を肩から斬り落とした。 「ガアアアア!」 アヤメは軽く鼻から息を吐いた。 「けーせーぎゃくてぇ~ん」 仰向けに倒れた少女の腹を、アヤメの血塗れの上履きが踏みつける。 「あたしらは下手に夢なんか見ずに、素直に六道輪廻を彷徨ってようや?」 剣が赤毛の少女の喉元に突き付けられる。 「消”エ”タ”ク”ナ”イ”ィ”ィ”イ”!」 「リセット可能なくせに一々ほざくな」 赤毛の少女は滅茶苦茶にもがく。 残された方の腕がアヤメのスカートをひっかけ、盛大にめくりあげた。 (あっちゃあ……) 夜薙が間の抜けた、どこか面白がっている声を出す。 アヤメは頬を引きつらせた後、ゆっくりと微笑んだ。 それは地獄花がほころんでいく様に似ていた。 「見たな、あたしのパンツ」 (♪~ 永遠の拷問を、その瞳に張り付いたわたしの顔は、地獄に落ちても剥がれない) ――ザシュッ。 白百合のようなアヤメの頬に、鮮やかな血飛沫が散った。
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