第八六一四話

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アヤメと夜薙は生き残りを探して校舎内を徘徊していた。 アヤメのスカートからは赤い液体が滴っている。 もちろん全て斬り殺した相手のものだ。 「あークソ、血ぃ吸って服が重ぇよ。乾いてくるとガビガビに固まって動きづらくなるし。なんで設定が少女ってだけでいつも制服姿なんだ?」 (いっそのこと脱いじゃえば?) 「そっち方面でサービスする気はねぇ。つーかこの血液量、生理何回分かね」 (あれ、鉄壁のアヤメちゃんに生理なんてあったっけ?) 「随分前に、鬼子作るっつって研究所に監禁されて、ぽこぽこガキ産まされた話があっただろーが」 (ああ、あれはえげつなくて面白かったねぇ) 「おまえの頭はウミウシみたいにカラフルでポップでドリーミングだな」 暢気なかけ合いをしながら、アヤメの足は誰かの内臓を踏みつけていく。 それを追って、長い黒髪が深海に閉ざされたような世界を漂う。 「お、発見」 三階の教室で少女が一人泣いていた。 机に腰掛け、小さな体を丸めて肩を震わせている。 どこにでもありそうな黒髪のボブカット、スカートも校則にぴったりの長さ。 図書委員でもしていそうな少女だ。 前髪が長く、顔の左半分が隠れてしまっている。 「他に生き残りもいないみたいだし、今回のラスボスはおまえってことでOK?」 少女はこちらに気づくと、派手な音を立てて机から転げ落ちた。 「わ、わたし……もう、嫌。ふ、普通の、人間、に、なり、たい……」 「とか言いつつ、これは何だよ? おまえがやったんだろうが」 床には遺体が二つ。 少女はびくりと肩をひきつらせ、また泣き始めた。 「怖いのも、痛いのも、嫌……」 「つっても最後の一人になるまでこの話は終わらねぇ。どっちかが勝たなきゃ夜は明けねぇんだよ」 アヤメは剣を構えた。
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