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遥か昔、世界は四つの大陸から成っていた。
北は北倶盧州(ほくぐろしゅう)、南は南膳部州(なんせんぶしゅう)、東は東勝神州(とうしょうしんしゅう)、西は西牛賀州(せいごがしゅう)である。
東勝神州、傲来国の花果山に、天地誕生の頃より在ったと伝えられる大きな岩があった。その仙岩は、長い長い時間日に照らされ、風に吹かれ、雨に晒されて、何万年も何十万年もそこに鎮座したままだった。
そんな仙岩に、やがて命が宿る。岩の中のそれはだんだんと育ち、ある日、悠久の沈黙を貫いてきた仙岩は、ガラガラと音をたてて砕け散った。
砕けた岩の中から現れたのは、ヒトの形をした生き物。造化の神の悪戯か、その生き物は人間ではなく、妖怪でもない。天の恵み、大地の鼓動が生んだ生命力の結晶だった。
その生き物は人間の四、五歳程の背丈の少年の形をしていた。濃い茶色の髪に赤いほっぺ、そして生命力に満ち溢れた金色の瞳。
人間はこれを『金晴眼』と呼び、災いの象徴として畏れてきた。
その生き物は辺りを睥睨し、活動を開始する。
その金の眼の輝きは、神々が住まう天上界にまで届いた。霊精殿にて暇を持て余していた天上界の長、玉帝はその光を目にし、なんとなく命じた。
「あれは一体何の光じゃ。様子を探ってまいれ」
すぐに二人の将軍を下界まで遣わす。千里を見通すことのできる千里眼と、万里を聞き取ることができる順風耳という将軍だ。
彼らは祥雲に乗って下界に降りていく。
「まったくやってらんないっすよ。ちじょーの偵察なんて」
移動の途中、大きな欠伸をしながら順風耳がぼやいた。胡座をかいて頬杖をついたまま、二度目の欠伸をした。
「不謹慎だぞ。玉帝の命令なんだから、一応」
「つっても未確認発光物体の調査じゃないっすか。自由研究ですか。こんなお使い、その辺の童子にやらせりゃいいのに」
生真面目な千里眼は順風耳の発言を咎めたが、実際、彼もあまり乗り気ではない。至極退屈な順風耳は、ついに柔軟体操をし始めた。いかに暇を潰すかを思案した結果が柔軟体操だったのだ。
「たしかに、将軍のするような仕事じゃないな」
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