第一章

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桜舞う4月の夜 私はいつものようにバイトから帰る途中だった。 その日、私は何を思ったのかいつもとは違う道で帰る事にした。 いつもならば街頭のある大きな通りの道で帰るのだが、ふと誰かに呼ばれている気がして、まるで何かに導かれる様に人通りの少ない小路へと進んで行った。 その道は暗く、街頭も無ければ民家も少ない。 少しある民家も、全て時代に取り残された様なものばかりだ。 普段ならば宵闇に包まれ何も見えない道だが、今宵は満月。 月明かりで多少なりとも周りが見える。 「こんな所初めて来たかも…」 慣れない道故に知らない場所に出てしまったのかも知れない。 けれど長い間この土地に住んでいるがこんな場所があったことは知らなかった。 私の目の前には大きな桜 月明かりに照らされた桜は幻想的でこの世のものとは思えなかった。 「…綺麗」 そこらの桜とは比べ物にならない大きさのその桜は恐らく樹齢500年は軽く超えている様な気がした。 《待ちわびたよ…皎月院…》 「誰!? 誰かいるの!?」 突然どこからか声が聞こえた。 澄んだ声は、少年も少女ともとれる蠱惑的な声だった 周囲に人影は無く、怖ろしくなって帰ろうとした途端、風が吹き視界が花びらで覆われた。
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