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タイムスリップ━━━━━
漫画や小説でよくある設定。
よくある設定だけどまさか自分がタイムスリップする日が来るなんて思っても見なかった…
辺りを見回しても街頭も夜景の光も無く、人工的な機械音もしない。
どう考えても、私の居た世界じゃない。
街頭の代わりに月明かりが私を照らし、いつもなら嫌でも聞こえてくる自動車のエンジン音の代わりに虫たちの声が聴こえる。
「…おい、大丈夫か?」
いつの間にか青年は私の横に立っていた。
余程変な顔をしていたのか心配そうな顔でこちらを見ていた。
「…大丈夫です。すみませんが今は何月ですか?そして此処は何処ですか?」
大丈夫だなんて言いながら端から聞いたら大丈夫じゃない質問をしている事位自分でも分かっているつもりだ。
私の横にいる青年の顔はさっきよりも心配の色が濃くなっている。
「今は皐月、そしてこの地は備中だが…」
皐月と言えば5月…備中は岡山、つまりは中国地方。そして今は1582年…秀吉が中国攻めをしているず…そして来月には…
とりあえず、これだけの情報があればどこぞのお偉方に情報を売って取り入ることは出来ないだry「おい、貴様。俺が親切にも貴様の心配をしてやり、さらに質問にも答えてやったと言うのに自分の名前は疎か礼さえも言えないのか?」
青年の言葉で自分の世界から引き戻された私は急いで礼を言った。
「お礼を言うのが遅れてしまい、申し訳ありません。ありがとうございました。」
ペコリと下げた頭を上げると青年はまだ不服そうな顔をしていた。
「それで貴様の名は何だ。よもや自分の名前すら分からない訳では有るまい」
「自分の名前位分かります!でも名前を聞く時は自分から名乗るべきじゃありませんか?」
さっきから素が出てきているのか青年の口調が大分変わってきている気がする。
だから素直に名前を名乗る気になれなかったからニッコリと効果音が付きそうなくらいのイヤミが少し入った笑みを浮かべて言ってやった。
「小娘の分際で生意気な…まぁ良いだろう、俺の名は石田三成だ」
青年の言葉に私はまたもやポカンとするしかなかった。
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