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「なるほど、君は何も知らないのだね」
何も知らないわけではない。
一般的な常識程度ならばわかる。
ただ、自分自身についての情報がすっぽりと抜け落ちているのだ。
「君の持っている常識とは、どうやらこの世界の常識ではないらしね」
目の前の生き物は、先ほどから僕の思考を勝手に読み取っているらしい。
・・・常識はずれな生き物だ。
しかし、この生き物が言うには、僕の持っている常識はこの世界のモノではないらしい。
ということは、この世界ではこの生き物が常識に当てはまっているのだろう。
「まぁ、常識なんて意味のないものさ、この世界ではね。
この世界では、想いがすべてなのさ」
想いが・・・すべて?
「強い想いが、この世界の物語を紡いでいくのさ。
・・・まぁ、説明しても理解するのは難しいだろうね。
なにしろ君が持っている常識には、まったく当てはまらないのだから」
確かに、自分の常識に当てはまらないモノを理解するのは、難しいだろう。
想いが世界の物語を紡ぐ、なんて言われても、正直ピンとこない。
「さて、君はいつまでもこんなとこにいるわけにはいかないな。
なにしろ君は、この世界に来た目的も、君自身のこともわからないのだから」
そういうと不思議な生き物は、おそらく手であろうふわふわしたものを私の額につけた。
「君の持つ常識とよく似た常識を持つ者の元へ送ってやろう。
彼女と行動を共にするうちに、君の目的も、君自身のこともいずれわかるだろう」
そう生き物が言い終わると、だんだんと眠くなってきた。
「さぁ、君の物語の始まりだ」
そこで、僕の意識は途切れた。
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