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薄暗い洞窟の中、2つの人影が向き合っていた。
その人影の一人はまだ幼さを残した少年の声で語り始めた。
「やっと見つけた、お前を殺してこの世界を救うことにするよ」
少年は握り締めた剣の切っ先を目の前の男に向ける。
しかし、明らかに殺意を向けられている男は悲しげに少年を見つめるだけだった。
「無駄だよ」
男は悲哀に満ちた声で言葉を発した。
少年は軽く男を睨むとノーモーションで男に接近して剣をなぎはらった。
しかし握った剣に手応えは感じられない。
「ごめんなさい」
いつの間にか少年の背後に回り込んだ男は静かに呟いた。
「“シード”(原始の種)」
男の目の前に金色に輝く小さな種が現れる。
「君には死んでもらうよ」
男はそれを飲み込んだ。
同時に男の喉から獣じみた叫び声が迸る。
ベキベキと音を立てながら男の体は人ならざる物に変化していく。
その姿は恐怖そのもののようだった。
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