旅立ち

2/2
前へ
/4ページ
次へ
あの事故以来、私のバイクは修理されて、弟が使っている。 「行ってきまーす!」 「気を付けてね」 「分かってるって」 「…あ」 駐車場まで来た所で、鍵を忘れたことに気が付いた。 『泰紀』 「?」 懐かしい声に振り向くと、手元に御守り付きの鍵が飛んできた。 「わっ!」 『ナイスキャッチ』 「ねぇちゃん…」 『気を付けて行きなさいよ』 「…ねぇちゃんこそ」 『何て顔してんのよ。…じゃぁね』 瑞希が、手を振って歩き出そうとした時、 「…ねぇちゃんっ!」 泰紀が呼び止めた。 『何?』 「また…、また…っ、俺のねぇちゃんになれよっ!!」 『………。あんたこそ』 瑞希が呟いた。 「え?」 『…あんたこそ、また私の弟になりなさいよ』 瑞希と泰紀は、胸を2回叩いて頷いた。 そして、互いに顔を見合わせて笑うと、2人別々の道を歩き始めた。 その笑顔は、まだ2人が小さかった頃、2人だけののサインを決めた時と何も変わらなかった。 ―『これ、2人だけのサインね。“約束”って意味』『うん!』―
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加