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あの事故以来、私のバイクは修理されて、弟が使っている。
「行ってきまーす!」
「気を付けてね」
「分かってるって」
「…あ」
駐車場まで来た所で、鍵を忘れたことに気が付いた。
『泰紀』
「?」
懐かしい声に振り向くと、手元に御守り付きの鍵が飛んできた。
「わっ!」
『ナイスキャッチ』
「ねぇちゃん…」
『気を付けて行きなさいよ』
「…ねぇちゃんこそ」
『何て顔してんのよ。…じゃぁね』
瑞希が、手を振って歩き出そうとした時、
「…ねぇちゃんっ!」
泰紀が呼び止めた。
『何?』
「また…、また…っ、俺のねぇちゃんになれよっ!!」
『………。あんたこそ』
瑞希が呟いた。
「え?」
『…あんたこそ、また私の弟になりなさいよ』
瑞希と泰紀は、胸を2回叩いて頷いた。
そして、互いに顔を見合わせて笑うと、2人別々の道を歩き始めた。
その笑顔は、まだ2人が小さかった頃、2人だけののサインを決めた時と何も変わらなかった。
―『これ、2人だけのサインね。“約束”って意味』『うん!』―
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