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魂が宿るなんて、只の言い伝えくらいにしか捉えていなかったのに、そいつはこうして俺の前に現れた。
「ふむ、儂が見えるとは見込みはあるようだ。源次郎の孫だと言ったな、奴も老いた物よ、つい昨日まで小僧だった気もするが…まぁ良い、主の名は何と申す」
初めは驚きで声も出なかったが不思議と恐怖というのは感じなかった。
「や、泰彦…だけど」
「泰彦か。よし、では早速その軟弱そうな体を鍛えてやろう!儂を持つのならば、強靭な肉体と精神を持ち合わせねばならんからな!」
「はぁっ!??」
…そして今に至る。
数日間過ごして泰彦が気付いたのは、声や姿が見えているのは自分だけだという事。
どうやらこの姿は宿っているとされる源綱ではなく、実体化した鬼切丸だという事。
そして、かなり小言が多く面倒臭い奴という事だ。
鬼切丸の口振りから、どうやら祖父とも面識はあるらしい。
こういう奴だと知った上で押し付けられた気がして、少し祖父を恨めしく思う。
鬼切丸の質問攻めを適当にあしらい、再びだらけだした泰彦の耳にバタバタと階段を駆け上がる音が聞こえた。
「泰君~!!数学の宿題写させて~!」
勢い良く開くドアと同時に、涙声で懇願する少女。
走って来たのか、その顔は少し火照って赤みが射している。
「…勝手に人の家に上がり込むな。てか勝手に俺の部屋のドア開けんな」
慣れているのか、泰彦は特に驚きもせず少女を睨んだ。
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