獅子ノ哭ク頃二

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「勝手にじゃないよ~ちゃんとお邪魔しますって言ったもん。あ、これお土産。泰君の好きなチョコモナカジャンボ」 またあの母親は鍵掛け忘れたのか。 ニコニコと笑いながら差し出されたコンビニの袋を受け取り、やれやれと重い腰を上げ数学のプリントを机に投げる。 「ほれ、さっさと写してさっさと帰れ」 「もう~さっさと帰れはちょっと冷たいんじゃないの?どうせ暇なくせに」 図星をつかれた泰彦は、黙ってアイスをかじりベッドの上で少女を見据え胡座をかく鬼切丸に目をやった。 「…泰彦、この娘は何者だ」 当然、鬼切丸の声は自分以外聞こえない。 無視しようかとも思ったが、その表情は険しくやけに神妙な面持ちであったので泰彦は部屋を一旦出る事にした。 「…ちょっと飲み物持って来るから、部屋のもん勝手に触るなよ」 ドアを閉めると、鬼切丸もするりとそこを通り抜けて来た。 「アイツは幼馴染みの名波菫って奴。てか人が居る時に話し掛けられても答えられないんだから、もうちょっと考えて…」 「主は気付いておらぬのか」 話を遮り、眉間に皺を寄せる鬼切丸に泰彦は怪訝な表情を返す。 「気付いてないって…何がだよ」 「あの娘、鬼に巣食われておるぞ」 「は?何言って…」 「普通の人間には見えぬだろうが、儂の姿が見える主なら見える筈だ。あの娘の物とは違う、もう一つの魂が。放って置けば、娘の魂を鬼に食われてしまうぞ」 泰彦は一呼吸置き、鼻で笑った。 「おいおい、変な冗談やめろよ。別に何時ものアイツと変わんねぇし、第一鬼なんて存在する訳…」 鬼切丸がふざけているようには見えない。 だけど、そんなの。 「ならばもう一度その目で良く見てみるがいい」 鬼切丸の鋭い視線と言葉が、そんな否定を打ち砕く。 「儂は鬼を斬る為の存在ぞ」 泰彦の心臓が、嫌な音を立てた。  
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