42人が本棚に入れています
本棚に追加
「マジで恐ぇな俺ら、ひゃはは!」
細い路地裏の中に、緑の奇妙な笑い声が木霊した。
それに同意する様に、黄太も苦笑いを零す。
「畏怖の目で見られるのは、好きじゃないんだけどね…」
「仕方ないよ、それが俺たちだもん、ね?紅兄ぃ」
ゆるりと斜め後ろを見て、壁に寄り掛かる赤を見る。
「力で制した覚えは無ぇ、まぁ、突っ掛かって来るアホ共は蹴散らしたけどな」
「それが不良さん達の拍車に掛かって、オレ達は売られた喧嘩を買って、噂が回って、こんな馬鹿げた決まりが出来ちゃった訳だけどね…」
やれやれと言わんばかりに、黄太が溜め息を付く。
「でも、総長も楽しそうだったよね、ケンカ」
「あっあれは不可抗力だよっ!つか楽しくない!」
「うっそー…足技めちゃくちゃ炸裂してたのに?」
「だだだだって、殴るのはきっ、気が引けるし……って言うか!喧嘩自体しちゃダメでしょ!?」
「あへあへ~」
「あへあへじゃないでしょ!?」
「…とりあえず、あいつら片付けるか」
紅牙がクイッと顎を横に反らした。
先程から呑気に会話をしていた訳だが、実は数分ほど前から、十人程度の不良と思わしき男達がずっとこちらを睨んでいた。
文句も言わず、待っている辺り、やはり自分達が恐いのだろうかと、黄太は思った。
「(そんなに喧嘩が強いって訳じゃないんだけどなぁ…)」
「良く待てが出来たなぁ…良い子だ」
ふっ、と紅牙が瞳を細めた。
辺りにテノールの声が良く響く。その言葉が合図となり、男達が吠え始めた。
「てめぇら、おちょくってんのかよ!」
「ぶっ殺す!!」
「ふざけんじゃねぇ!」
三下の決まり文句の様なものを吐いて、男達はこちらに襲い掛かる。
くつりと、ニヒルな笑みをした紅牙が、彼等に言葉を落とす。
「雑魚には似合いの台詞だ、な!」
「かはっ」
長い足に繰り出された回し蹴りは、見事に不良の脇腹に命中し、吹き飛ばされた。
不良は身もだえしながら、地に横たわる。
「っ!クソっ!!」
一瞬で仲間が倒された事に動揺したのか、多数が狼狽えた。
その不意を突く犬が一匹。
「よそ見、してる暇…あんの?」
背中にぞわりと寒気が来れば、後ろに待つは、笑みを深めた狂犬が一匹。
「あははっ」
振り返り様に喰らった拳は顔面に当たり、また一人、鼻から血を出しながら倒れた。
最初のコメントを投稿しよう!