小説

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「マジで恐ぇな俺ら、ひゃはは!」 細い路地裏の中に、緑の奇妙な笑い声が木霊した。 それに同意する様に、黄太も苦笑いを零す。 「畏怖の目で見られるのは、好きじゃないんだけどね…」 「仕方ないよ、それが俺たちだもん、ね?紅兄ぃ」 ゆるりと斜め後ろを見て、壁に寄り掛かる赤を見る。 「力で制した覚えは無ぇ、まぁ、突っ掛かって来るアホ共は蹴散らしたけどな」 「それが不良さん達の拍車に掛かって、オレ達は売られた喧嘩を買って、噂が回って、こんな馬鹿げた決まりが出来ちゃった訳だけどね…」 やれやれと言わんばかりに、黄太が溜め息を付く。 「でも、総長も楽しそうだったよね、ケンカ」 「あっあれは不可抗力だよっ!つか楽しくない!」 「うっそー…足技めちゃくちゃ炸裂してたのに?」 「だだだだって、殴るのはきっ、気が引けるし……って言うか!喧嘩自体しちゃダメでしょ!?」 「あへあへ~」 「あへあへじゃないでしょ!?」 「…とりあえず、あいつら片付けるか」 紅牙がクイッと顎を横に反らした。 先程から呑気に会話をしていた訳だが、実は数分ほど前から、十人程度の不良と思わしき男達がずっとこちらを睨んでいた。 文句も言わず、待っている辺り、やはり自分達が恐いのだろうかと、黄太は思った。 「(そんなに喧嘩が強いって訳じゃないんだけどなぁ…)」 「良く待てが出来たなぁ…良い子だ」 ふっ、と紅牙が瞳を細めた。 辺りにテノールの声が良く響く。その言葉が合図となり、男達が吠え始めた。 「てめぇら、おちょくってんのかよ!」 「ぶっ殺す!!」 「ふざけんじゃねぇ!」 三下の決まり文句の様なものを吐いて、男達はこちらに襲い掛かる。 くつりと、ニヒルな笑みをした紅牙が、彼等に言葉を落とす。 「雑魚には似合いの台詞だ、な!」 「かはっ」 長い足に繰り出された回し蹴りは、見事に不良の脇腹に命中し、吹き飛ばされた。 不良は身もだえしながら、地に横たわる。 「っ!クソっ!!」 一瞬で仲間が倒された事に動揺したのか、多数が狼狽えた。 その不意を突く犬が一匹。 「よそ見、してる暇…あんの?」 背中にぞわりと寒気が来れば、後ろに待つは、笑みを深めた狂犬が一匹。 「あははっ」 振り返り様に喰らった拳は顔面に当たり、また一人、鼻から血を出しながら倒れた。
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