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物語の始まりはどこかの話しで聞いたように随分とありきたりだった。
俺は訳あって授業中にも関わらず屋上で仰向けになりながら空を見上げていた。
教師側も何も言ってこない。
ただただ静かな時が流れていた。
こんな日は教室で机に向かって勉強するよりはこうして昼寝する方が有意義である。
こうも静かで平和だと世界に自分一人しか存在しないのではないかと思えてくる。
ゆっくりと瞼を閉じて意識を手放す。
唄が聞こえてきた。
とても不思議な唄だ。
懐かしいような新鮮なような
悲しいような嬉しいような
辛いような楽しいような
不思議な感覚になる唄
この静かな世界に響き渡る綺麗な声音。
上体を起こして周りを見回すと長い銀髪の少女が貯水タンクの上に腰を掛けて座っており、こちらを見つめていた。
しばらくこちらも見つめ返していたがすぐにどうでも良くなって視線を外して元の体制に戻る。
魔女のような格好の少女はいまだこちらを眺めながら唄っている。
視線が気になるが今は唄を聴くほうが俺にとっては重要である。
そう、こんな感じで物語は始まった気がする。
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