嫌われ者

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世界はいつも理不尽で不公平だ。 努力しても報われず夢は理不尽によって潰される。 力が無ければ当然のように世界に否定される。 世界が求めるのはいつも強者で 世界が否定するのはいつも弱者だ。 そんな哲学的なことを考えながら俺こと如月 龍也(きさらぎ たつや)は空を見上げていた。 いつも通り授業をサボって屋上で昼寝 教室で勉強してる連中はもうすぐ昼休みだとウズウズしている頃だろうな。 キーンコーンカーンコーン 鳴り響くは昼休みを伝える鐘 鳴り終わると同時に学校も騒がしくなる。 「はぁ」 軽く溜め息、そこで俺は気が付いた。 ばっと勢いよく振り向く 貯水タンクの上、つい一分ぐらい前まで座っていた少女が居ない。 「...んな馬鹿な」 世の中には不思議なことがあるもんだ。 もしかしたら幻覚と幻聴だったのかもしれない。 「疲れが溜まってるのかな?」 もうちょっとしたらここにも生徒がやってくる、その前に逃げよう。 逃げた先は校舎裏 普段から人があまり近寄らず俺の数少ない憩いの場 しかしどうやら今日は先客が居たようだ。 「アンタ調子に乗ってんなよ」 こっそりと物陰から様子を伺う、そこでは一人の少女を大勢で囲んでいる少女の集団 イジメの生現場、弱者が強者に潰されようとしている瞬間 俺はそのイジメを見て憤怒した。 泣きながら集団のリーダーらしき人物に「助けて」と懇願しているイジメられっ子少女 ...ヘドが出る! ただ泣き叫び、助けを求めて、最後には相手に媚びへつらう。 そしてこう思うのだ 「どうしてこうなったの?」と 理由は簡単だ、力が無いから。 困難に立ち向かう勇気が無いから。 ただ助けを求めるのではなく自分が逆らおうと決意し行動しなければ決して運命は好転しない。 少女はロクに抵抗もせずに運命を受け入れた。 少女を助ける価値はないな、そう思って俺は踵を返してその場を後にする。 せめて少女に幸運を願うよ。
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