嫌われ者

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とにかく俺が言いたいのは一つ 「大人しく仕事しとけ」 「今日はアンタを捕まえるのが仕事!!」 面倒臭い奴に絡まれたものだな。 まったく今日は尽いていないぜ。 「そう焦るな、せっかくの良い天気なんだし一緒に寝ようぜ」 「なっ、アンタそれはどういう意味よ!?」 昼寝の誘いなのになんでそんな顔を赤らめる? 「ならじゃあな、俺は寝る」 「だから待ちなさいよ諸悪の根源!!」 諸悪の根源ねぇ、世間からすれば間違いないか。 ガミガミとうるさい花音を振り切って屋上に再来 もうすぐ授業が始まるので生徒の姿が見当たらない。 代わりにあの唄が聞こえてきた。 ばっ!と貯水タンクの上を見るとやはりそこには少女が座って唄っている。 まるでお伽噺からくり貫いてきたような光景 少女は唄いながらこちらをじっと睨む。 「っ!?」 目があった瞬間、背筋に寒気が走った。 本能がサイレンを鳴らしている、だけど少女の姿に魅了されてしまっているのか足が動かない。 足だけではない。腕が、視線が、体が、声が一切合切機能しない。 まるで俺の周りだけ時間が止まったかのようになにもできなくなっている。 それぐらい奇妙な感覚 先程は美しく聴こえた唄も今は恐怖しか感じない。 身体中から冷たい汗が滝のように吹き出る。 逃げたくて逃げたくてしょうがない。 少女は相変わらず無表情にこちらを向いて唄う。 「...あっ」 気が付いた時にはもう遅い。 間抜けな声と共に顔から地面に崩れ落ちる。 俺は意識をそこで手放した。
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