売り

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あたしには 誰にも言えない秘密がある。 人とは思えない、最低なことをしたんだ。 けれど、ああでもしなければ あたしは1人になれなかった。 自由になれなかった。 もう 帰る場所も 居場所もない。 けれど 後戻りはできない。 最近のあたしは 命の終わりばかり考えていた。 あたしには死ぬ勇気も資格もない。 けれどもう疲れてしまったんだ。 この街で生きていくことに。 1人になると いつもこんなこと考えてる。 深夜1時。 心のおくに鉛がたまっていくような感覚。 気持ち悪いけど、唯一生きていることを実感できる感覚。 深夜の交差点は、少ないがそれなりに人はいる。 何もしなくたって、 派手な服を来て一日中突っ立っていれば そのうちカモがくる。 昼間、大型デパートの隣にあるパチンコ屋の前で 2人組に声をかけられた。 お腹が空いていたから 「オムライスが食べたい」と言って サイゼでおごってもらった。 その後、2人組が雰囲気が良いと太鼓判のホテルへ行き、いつものように 写真を撮らせた。 ちなみに ホテルの雰囲気は最悪だった。 古くてムードのない薄汚い部屋だった。 ないとは思うが もしかしたらあたしは ここで作られたのかもしれない。 万が一そうだったなら、少し嫌だと思った。 あたしはどこで作られたのだろう? どの瞬間、結ばれたのだろう? 頭良くないくせに あたしはすぐに難しいテツガクの本に書いてあるようなことを考える。 そんなところも、 全て嫌いだ。 「あーやこ!」 背後で鳴った声に振り返る。 そこには、クラブでよく会うマナミが1人のおじさんと立っていた。 マナミはぎちぎちに傷んだ髪のショートヘア。 「マナミぃ。久しぶり。」 適当に久しぶりなんて言葉を吐き出す。 「やあーだ、おととい会ったじゃあん! 絢子ってテキトーすぎ。」 「あはは。…マナミ、その人は?」 マナミの隣で棒立ちしているスーツ姿の男を指差す。 「ん?今日遊ぶ人。」 「ふーん。」 「じゃ、またねえ。」 「バイバイ。」 軽くあしらわれた気がして引っかかったけど それはお互い様だ。 マナミはスーツ男と腕を組んで駅の方へ行った。
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