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現在獏喰国は内乱中である
横暴であった先々代から徐々に荒れ始め、盟友であった緘竜組とも疎遠になる
国交も細々としたものになり、政に携わる者達は私腹を肥やすのに忙しかった
何とか民達が各々支えてはいるが国としては殆ど機能してはいない
治める地ごとに圧制の度合いは違えど、国を捨てるものも少なくない
首都では緘竜組が自衛、統治をしているのでそれほど感じないだろうが獏喰国は疲弊していった
そんな中ついに先代が亡くなり、国主に付いたのはたかだか10歳の子供
しかも正当な血筋などではなかったがこれの母と先代の縁で国主の第5後継の権利を得ていたのだ
「末恐ろしい子よ…いつ首をかかれるか分からぬわ」
「あの童の下になどつきとうない、すぐに割れそうな屋根は願い下げじゃ!」
第1~第4までの後継が全て戦や病で倒れたのを、まるで仕組まれていたかのように吹聴する大人達
加えて幼さや女子であることを引き合いにだされ、国を動かすのは大臣らとなった
唯一あるのは国主権限、だが使うには知識も気迫も足りなかった
城内の味方は 少ないのだ
そして第1後継を亡くした母親は、第7後継の息子も産んでいた
目障りなものは消すのが道理
最初に倒れたのは小さな国主を励ましてくれていた翁だった
毒見役の彼を揺さぶって泣いた
夜中に突き立てられ刀には、身代わりとして寝ていた少年が犠牲になった
母が亡くなってからそばにいてくれた女中は、湯浴みの最中首に手をかけ沈めてきた
小さな あの子が何をした
何かとんでもない失態をしたか
沢山の大人達から指をさされるようなことをあの子がしたのか
抱き上げてくれる腕を知らず幼いうちから失うことばかり学んで
自問自答を繰り返しているじゃないか
「私が悪いのです、ごめんなさい」
「この国が好きです、母様が沢山素敵な所を教えてくれました」
「でもごめんなさい私にはなにもできない、ごめんなさい…」
俯くその子の背後に、見下ろす人影
ぬらりと手が伸びた
味方はもう いなかった
命からがら門の外へ飛び出していった小さな国主
その後ろで重厚な扉が閉ざされた
潰される前に出した 一歩目だった
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