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キィ…
しっかりした木製の扉。分厚いドアノックが歴史の古さを感じさせる。そんな木造2階建て。
軽い軋みの音を立てて、木でできた扉をゆっくりと開ける。
とたんになんともいえないかび臭いような、木の腐ったような匂いが飛んできた。
「ひっ!」
匂い攻撃に思わずオレの後ろに飛びのくフィーラ。こらこら。
オレはフィーラをおいて屋敷の中へ進入した。
「あ、まってキャロル!」
玄関から中に入ると、風でふわりと埃が舞う。
外からの光をあび、まるでその場所だけに天使の羽が現れたようだ。
今は午前2時。外はむあっとするような暑さで、中はかなりの湿度で息苦しさを感じずにはいられない。
もう一時間もすれば過ごしやすい気温になるだろうが、今はこれでいいと思った。
貴重な夏のひと時。
神経を研ぎ澄ませる。
後ろから腕を掴んでくるフィーラ。
…暑っ。。。
ピンクの体毛の生えている彼女は人間よりも体温が高く、身体能力もかなりある。しかし其の分人間より短命なのだ。
そんなこいつとオレは、コンビを組んで、化け物退治の仕事をやっている。
この地域にはモンスターが多くはびこっている。
大体は、今は居ない魔王の置き土産としてこの精霊世界の大地にのこり、今もその存在を主張しているのである。
今日も、人の住まなくいなった古屋敷に、何かよからぬものが住み着いているとの近隣の住民からの通報により上の方から依頼がやってきて、オレ達が様子をみにきたのであるが…。
廊下から一つ一つの部屋へ入る。
一歩歩くたび、白い煙が舞い上がる。
人の住まなくなった家というのはひたすらさびるのが早い。窓が割れ、カーテンはぼろぼろ。
一つ部屋に入った。
寝室のようだが、古い机があった。
その机にふとした違和感を覚える。
オレはつつ…と机の上を指でなぞる。
綺麗な机。
その机の上には大理石から削った持ち手の、高級な造りの金属ペンが転がっていた。
コロン…。
ペンが転がった。
部屋の入口の方から音がする。
窓から風が吹いていた。
妖精の悪戯心に思わずにやりとしていると、入り口近くで、その様子を見ていたフィーラが、がたがたと震えていた。
おまいも妖怪みたいなもんじゃねぇか…。
ため息一つ、部屋を出た。
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