華子の章

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居間に入り、ぐるりと中を見回した。 居間と食堂がつながっているが造りはそれほど昔でもない。最近のデザインだ。 そして埃をかぶってはいるが、何故か数年ほっとかれっぱなしの家の中には見えなかった。 「ねぇフィーラ、これ見て。」 オレはベルベットで出来たソファーの右隅を指差した。 「…いいソファーね。」 「見るところ違ーう!!」 怖いものから目をそらすように、見当違いなことを言うフィーラ。 「いたたた。頭ぐりぐりはやめてぇぇえ~!ふぇ~ん!」 オレはフィーラの頭をぐりぐりやるともう一度よく注意して見るよう促した。 この大ボケ猫。 耳をぴくつかせながらソファーを見る彼女。 「…右隅だけ色が変わっている…。」 「正確には、そこだけ埃がたまってない、かな。さぁこれはどういう意味かな?」 オレは腕を組んで考えるしぐさをしてみせた。 「ちょ、誰かがここに座っているってこと!?」 「いえす!!もしかしたらオレ達が探してるターゲットかもしれないってこと。こいつは今姿を見せないけれどちゃんといる。」 ちょっと誇らしげに胸をはってみせると、とたんにフィーラはぷるぷる振るえだした。 「いやややゃゃ……」 「さぁ!ここでターゲットの出現を待つよぉ~!!」 オレはソファーの上にどっかり座ると、フィーラを隣の一人用チェアーに座るよう顎でさした。 「うにゃ~ん!!いやぁぁぁぁ~~~~!!」
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