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「第二十五話、恐怖のトイレ。」
ごぐり。唾液を飲み下す音が聞こえた。
もう何度目なのか、オレはひたすらにノンフィクション恐怖の100物語を語り続けるのであった。
「エリスちゃんは悪戯好きの女の子。黒い長い髪の毛の、とっても可愛い女の子でした。
その日エリスちゃんは先生に呼ばれ、今日も長いお説教を受けてしまうのです。お友達は放課後に残されたエリスちゃんを置いて、白状にも帰ってしまうのです。
さぁもう太陽は赤紫に染め上がり、薄暗い廊下にはわずかな光しか入りません。そんな中……」
オレはゆっくりとタメを作った。
二呼吸おいて続きを話す。
「なんとエリスちゃんはトイレに行きたくなっていきたくなってたまらなくなってしまったのです!!!」
「そんな!暗い中トイレに行くだなんで!?」
今度は三呼吸。フィーラの目を見つつ…。
「急いでトイレに行くエリスちゃん。なんたってもうすぐ真っ暗に日が沈んでしまうのですから!!さぁ、後三歩でトイレに付くエリスちゃん。
一歩…二歩…三歩……。」
いったん呼吸を入れるオレ。
フィーラは急いで!と続きを促した。
「エリスちゃんは、やっとトイレのドアに近づきました。もうここまでくると、急いで個室のドアをあけ、迫る勢いでスカートをたくし上げ下着を脱ぎながら、用を足そうとドアを閉めましたが、なんとその時!!!」
オレは大きい音が鳴るようにぱんっと膝を叩いた。
「流れなかった巨大なうんこがっ!!」
「うっきゃぁぁあああああああ!!!!」
ぽけっ。
唐突に後ろからオレの頭を殴る腕が。
…いたぃ。
『ぜんっぜん怖くないではないか!!!』
「きゃああああああああああああ!!!!」
後ろからなぞの声が聞こえると同時にオレの顔を見て騒ぐフィーラ。
来たな!!!
オレはくるりと振り向いた。
この時をまっていたのだぁっ!!
むぎゅうとオレの身長ほどある剣を握ると、ついにそいつと対峙した!!
キィン……
空気が変わった。
湿気を帯びた部屋の空気は冷たくなり、薔薇のような、甘い粘つく匂いがじんわりこもる。
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