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ゆれる黒い巻き髪と、細かいフリルのついた純白のビスチェドレス。
体を巻きつける血液にまみれたその包帯は、彼女の下半身と腕の周りをしっかりと包んでいた。
そして何よりその美貌。
まるで、悪魔のような妖艶さ。
「お前は?」
その名を問うた。
彼女は答えるだろう。あまりに気高いその存在は、目の前の人間など全くどうでもいいという様に、オレのことは何も聞いてはこなかった。
華子。
彼女はそう言った。
そして、ちょっと不機嫌な顔をした。
『貴様…、さっきからきいていればぜんっぜん面白く無いではないか!我が手本を見せてくれる!!』
!??!!?
『第二十六話、赤い太腿…』
…
あーっと……
その妖艶な美女は、オレの続きを語りだした。
「ねぇ、キャロル、あんたの言うとおり怖い話をしたからちゃんと出てきたみたいだけど…」
分かっているさ!!
「フィーラ、行くぞ!!」
「ええ!!」
オレはこいつを退治しに来たんだ!!
古屋敷に住み着く…昔の亡霊!!
紅色の唇が開く。巻き毛がうねくり、血の混じった包帯がゆれる。
『おや、聞いていってはくれぬのか?なかなかの自信作なのだが、仕方ない…』
華子は、ドレスの間から垂れ下がる、血液にまみれた包帯を、ゆっくりと踊らせ始めた。
『これは、紅色の蜘蛛と呼ぶ。』
静かに口から漏れたその技名。
部屋全体に、彼女の体からつながる包帯が伸び、たしかに蜘蛛の巣のようにそれは緻密に編みこまれていった。
いったんどこかを絡めとられるとまず抜け出すことは出来ないだろう。
なにせ、戦うにはせますぎる室内だ。
こいつはよく地形を理解している…。
水のしたたる音。
包帯から、血液が滴っていた。
たくさん。
たくさん…。
そいつの息使いが聞こえるほどに、オレはその場から動けずにいた。
そいつはこのすきの無さを楽しんでいた。オレ達がどう出るか試しているな!
ちょうど2分ほどたったころ。
がたん!!
不意にオレの横から音がした。フィーラが緊張に耐え兼ね、その手を動かしたのだ!しめた!
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