ここから物語ははじまった

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俺は一人、今日も剣術の稽古に明け暮れる。 まだ早朝、妹のユミナはまだ寝ていることだろう。 「はっ!はっ!はぁっ!」 俺の毎日の日課、あの日以来強くなるために、ユミナを守るために俺は日々修行を重ねる。 「おはようお兄ちゃん、がんばってるね」 「あぁ、おはようユミナ」 ユミナが家から出てくる。朝、ユミナが俺を呼びに来るのは朝食が出来た合図でもあって…… ぐぅ~…… 「ふふっ、いっぱいあるから大丈夫だよ」 「あぁ、たらふく食べさせてもらうよ」 俺の腹の虫が空腹なのを主張する。 笑顔のユミナを伴って家に入る。 「お兄ちゃん、朝御飯の前に水浴びして来たら?」 「腹が減って死にそうなお兄ちゃんに対してそれは酷だぞ妹よ!」 「はいはい、ご飯食べたら水浴びだよ?」 「はーい」 二人でじゃれあいながらテーブルに着く。 俺とユミナの二人分だけ朝飯の用意がしてあるテーブル。 俺達の父さんと母さんはクエストの途中で帰らぬ人となった。 マシィル夫婦と言えばギルドで知らないのは新人ぐらいだと言われる程有名だった。 曰わく、二人と飲むと二日酔いではなく三日酔いになる…… 曰わく、二人の間に挟まれたらあらゆる意味で死ぬ…… 曰わく、前衛と後衛のポジショニングの教科書…… 曰わく、二人の本気を見た者は地獄を見る…… 挙げていったらキリが無い。 でも、みんなから慕われている最高のギルドメンバーだったと必ず最後に締めくくられる。 「お兄ちゃん、今日はどんなクエストを受けるの?」 「さぁ?分からん。掲示板次第かな?」 「あんまり危ないのはやめてね?回復が大変なんだから」 「わかってる。ムチャはしないよ」 俺とユミナも二人でコンビを組んでギルドに所属している。 もちろん俺が前衛でユミナが後衛だ。 俺は父さんの形見の刀を大抵使っているが、本当にヤバい時は背中の太刀を使う。 ユミナは回復魔法だけでなくいくつかの強化魔法に、風の攻撃魔法も使える天才だ。母さんの形見の弓を手に、的確なバックアップをしてくれる。 「ふぅ、ごちそうさん」 「お粗末様でした」 「よし、行くか!」 「うんっ!」 俺達は適当に片付けるとギルドに向かう。 この日に受けたクエストが、俺達の運命を突き動かすことになるとは、その時の俺は微塵も考えていなかった。
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