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俺達は順調に山頂を目指していた。
道中にほとんど魔物が居なくて、楽に上に登っていく。
だが、途中でとんでもない魔物に遭遇する。
「お兄ちゃん、あのドラゴンって?」
「あれは……カイザードラゴン!?なんでこんな所に」
鈍く黄金色に光る龍鱗を持ち、その黒い爪は俺達人間の太ももよりも確実に太く、広げたら自身の全長にほぼ等しくなる強靭で長い羽。
地上圏に生息するドラゴン種の中では1,2を争う強さを誇る。恐らくコイツのせいで魔物が少なかったんだろう。
カイザードラゴンの討伐クエストは大きさにもよるが、最低でもAランクのクエストになる。
「お兄ちゃん、どうするの?」
「カイザードラゴン相手は俺達じゃあ分が悪すぎる。一度撤退してギルドに報告だ」
「うん、了解」
俺達はカイザードラゴンに気付かれないよう、ゆっくりとその場を離れて下山を始める。
全長は目測で最低48クーロン(約24メートル)はあったから、恐らくAAランク以上の討伐クエストになると思う。
「クァァー!」
背後から耳をつんざく咆哮が響き渡る。たまらず耳を抑えてその場にうずくまってしまう。
ユミナは風の魔法で障壁を貼って防いでいるが、それが精一杯だと表情から見て取れる。
「ちっ、見つかっちまったか……全力で逃げるぞ!」
「うん!アクセルウィンド!」
ユミナの風魔法で俺の足が速くなる。
そのままユミナを背負うと全速力で山を下る。
「お兄ちゃん、右に避けて!」
「おぅ!」
背後からカイザードラゴンの火炎弾が飛んでくるが、ユミナのナビでなんとか回避しながら山道を下る。
「お兄ちゃん、その先を右に曲がって坑道に入ろう!そこまでカイザードラゴンも来ないはず」
「あぁ、了解!」
「ウィンドブロック!」
ユミナが魔法で分かれ道に空気の壁を生成する。
その壁を蹴って方向転換し、スピードを殺さずに走り抜け、そのまま坑道に逃げ込む。
俺達の急な方向転換にカイザードラゴンは一瞬反応が遅れ、俺達を見逃してしまう形になる。
外ではカイザードラゴンの悔しそうな咆哮が鳴り響いていた。
「なっ!?何故ミュラー山にカイザードラゴンが居るんだ!?」
「速くロンやユミィを助けに行かないと!」
ギルドの救助隊は、焦りをなんとか押し止めながらもミュラー山に急ぐ。
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