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11月16日
僕は警視庁捜査一課の自分のデスクのノートパソコンに向かい、昨日解決した強盗殺人の報告書を書いていた。
ふと、腕時計をみると、針は丁度、正午を示していた。
報告書を書き始めて、二時間程が経ってしまった。
「はぁ」
と、ついつい溜め息をしてしまった。すると、背中を誰かがパンッと叩いてきた。
振り替えると、先輩刑事の長谷川警部元気な笑顔で立っていた。
強面で、がたいがよく、初対面の人がみたら必ず、ビビってしまう(僕もそうだった)が、人一倍、正義感が強く、優しくて、何より後輩思いの警察官だ。
僕の理想とする刑事だ。
「おい。新人。溜め息なんかついたら、幸せが逃げるんだぜ」
長谷川警部は僕の事は新人と呼ぶのだ。
「警部。僕には織部誠って言う名前があるんです」
「知ってるよ」
そう言って、先輩刑事はガハハハと笑った。
僕も、アハハと笑った。
実はこの会話が最近の日課になっているのだ。
配属当初は捜査一課の職場はピリピリした空気が漂っていると思っていたが、警部のおかげて、そのイメージは間違いだったと今は思っている。
「昨日の強殺事件の報告書か?」
警部が僕のノートパソコンのディスプレイを覗き見ながら訊いてきた。
「はい。でも、中々、上手く書けなくて・・・」
僕は正直に答えた。
「仕方ないな。俺が教えてやるよ」
「いや。でも・・・」
僕は先輩刑事の手を煩わせるのを避けるために断ろうとした。
「いいから。遠慮するな。これも、新人教育の一環だ」
「それじゃ。お願いします」
こうして、僕は先輩刑事の力を借りることにした。
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