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取り柄もなくぶっきらぼうなサブロウだったが、風貌といえば決して悪い物ではなかった。
目ははっきりとして鼻筋は通っていた。肌は少し焼けていて背も170そこそこだったので見る人によっては良い男と言われても可笑しくなかったのである。ただ、口数少なく垢抜けないソレがサブロウに陰鬱な印象を与えていたのかもしれない。
会社が倒産してから早くも二ヶ月が過ぎていた。再就職先を捜すにもめぼしい所は無く、いたずらに時間だけが過ぎていった。
いくら貯金があるにせよ、月々の家賃や光熱費食費は減っていくわけで、何時までも遊んでいる訳には行かなかった。無駄な浪費はしないまでも焦りも徐々に募っていく。
そんなある日、かつての鉄工所の同僚から連絡があった。
「久しぶりに飲みにいかないか?話したい事もあるしどうだろうか?」
同僚はハヤサカと言う少しノリの軽い奴で、軽口をたたく男だ。
サブロウは当時からハヤサカの事をあまり面白く思っていなかったが、暫く誰とも関わりが無かったせいかすぐに誘いに乗った。
誰かと関わりを持つのが苦手だったが、何となく外気に触れたい気持ちが湧いていた。
サブロウ自身もそんな自分の一面を驚きもしたが、人との関わりに少し餓えていたのだと思った。
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