狂った

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ザーーーーーーーー 目を開ければ灰色の空。雨が降っている。体中が痛い。一体どのくらい気絶していたんだろ… 「…にい、さ」 どこにいるの兄さん。手に感じる感触。兄さんの手だ…よかった…俺たち生きてる。ずっと握っててくれたんだね… 「兄さ、ん……?」 握った手の先をたどる。 「あ、れ……?」 兄さんの肘から先が、ない。いない。肘から先は俺たちの乗ってたバスに、ツブサレテル? 「あ、あ…ああ…」 バスの下から血がにじみ出てる。なんで?ねぇ、誰か嘘だって言って。この手は兄さんのじゃないって言ってよ。お願いだから夢だって。バスの下にいるのは兄さんじゃないって言って。 「あ゙あ゙あ゙あ゙ああああああああああ」 呼吸がうまくできない。ひゅーひゅーと喉がなる。涙で前が見えない。 兄さんの手を引っ張れば、ズルリと肘から千切れた。その腕を抱きしめる。 「いや、いやいや!!…スンヒョ…スンヒョン!!スンヒョン、いや!!ああああああ!誰か助けて、助けてぇぇ!!」 呼べなかった名前を今更呼んでも兄さんは応えてくれない。助けを読んでも誰も助けてくれない。バスをどかそうと持ち上げようとしてもびくともしない。 「スンヒョ、いや…お願い…置いていかないでぇぇ!!」 置いていかないで。逝くなら一緒に逝かして。一人にしないで。 「あ、は…はは…」 顔がひきつって笑いがでてくる。 そっか…もう… 「スンヒョン…死んじゃったんだ」 もう戻ってこない愛しい人。兄さんの腕を見つめる。頭が妙に冴えるのに、涙は止まらない。 「ジヨンっ!!」 頭から血を流しているヨンベが走ってくる。俺は笑う。ヨンベが目を見開く。 「あは…スンヒョン…死んじゃったよ」 そっからは覚えてない。  
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