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コッコッ。
軽くドアを叩く音がした。
「どちら様?」
読んでいた資料から顔を上げ、小野田公顕警察庁官房室長が面倒臭そうに言った。
『杉下です、お呼びのようでしたので』
ドアの向こうからは、落ち着きはらっていて、それでいて凛とした芯の通った声。
「ああ、杉下か。入って」
その声を聞いて、杉下と呼ばれた男が部屋に入って来た。
すらりとした身体には三つボタンのシングルスーツをまとい、銀縁の眼鏡をかけている。
読んでいた資料をぱさ、と置いて、小野田が杉下をソファーに案内した。
「亀山くんが居なくなってから、調子はどうかしら?」
小野田がソファーに腰かけながら言うと、それを見て一礼した杉下もソファーに腰かける。
「ええ、なんら変わりはありません。亀山くんから連絡はありませんが、それほど充実した日々を送っているのだと、僕は解釈しています」
杉下が淡々と述べた。
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