平安時代

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灯も無く、月明かりが御簾に差し込む部屋の中、鏡台の前。 鏡に映しだされる一人の女。 紅の衣に、艶やかな黒髪が映えて、 妖艶な雰囲気を醸し出していた。 女は、包帯で巻かれた顔を手で覆い、 髪を振り乱して暴れ、 鏡を手にして泣いていた。 その拍子に包帯が乱れ、 彼女の素顔が表れる。 こんなの――こんな―…! ―――――! 顔に手を当て、顔の半分は火傷で醜く爛れているが、反対側から窺えるのは、 端正な顔立ち。 あぁ、一宮様…ずっと、ずっと、お慕い申しておりましたのに… どうして、どうして―――…。 紅の花が美しく彫られた鏡は、 ただ静かに月光を受けて、 泣き濡れ、狂乱する女を映していた。
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