変わらぬモノと変わりゆく者

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二人で久しぶりにダラダラ家で過ごして、昼になってのんびりとご飯を食べる。 話をするでもなく、短い会話ばかりだけど決して嫌いじゃなくて、寧ろ居心地が良い。 チャーハンは竜が作ってくれたから、俺が洗い物をする。 テレビを見る竜の後ろ姿を見つめながら、こんな生活いいよななんてなんとなく憧れる。 別にこれから叶えられない夢じゃないし、叶うならずっとこのままでいたい。 大人になりたくないとかそういうのでも決してなくて、ただゆっくりでもいいから…二人で歩いて行きたい。 一緒にいたはずなのに、いつも隣にいたのは俺なのに、本当に隣を歩いていたかは分からなかった。 そんな溝はすぐに勝手に広がって、埋まってはまた広がって、少しずつ近付いてはまた遠ざかってを繰り返してきた。 竜が見るニュースには、町を彩るイルミネーションの特集が。 それが終われば、年ももう明ける。 いろいろあったはずのこの一年も、言ってしまえば後数日で終わるのだ。 早かったような、長かったようなそんないろんな思いも混ざって、気が付いたら…そっと後ろから竜に抱き着いていた。 『洗い物終わった?』 『ん…』 『さんきゅ。何、今日はやけに甘えたがりとか?』 嫌がったりしないのは多分、俺の態度がいつもと少し違うのを知っているから。 クスクス笑いながらも、手だけは優しく俺の頭を撫でてくる。 『お前らしくねぇじゃん』 『ん…、分かってる……』 『分かってんなら、元気出せよ』 『…ぅん……』 そう言われたって幸せを感じた後は必ず不安が押し寄せるもの。 竜は不安じゃない…? 俺といて幸せだよな……? そんな無意味な質問をやはり問いたくなるのは、町を彩るイルミネーションが今はまだ白黒に見えてしまうんだ。
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