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~竜~
電話を終えた隼人がそっと溜め息を吐いた。
電話の内容は所々聞こえてはいたものの、すべてはっきりとは聞こえていなかった。
隼人に何を彼が吹き込んだのかは分からないが、あまり表情がいいとは言えない。
そんな隼人の右手を少しだけ強く握りしめると、こちらに気付き優しく頭を撫でてきた。
『クリスマスイヴの18時に迎えに来るって。お前なら意味が分かるって言ってた』
そう言った時の隼人の顔はどこか寂しそうで、無償に抱きしめたくなる。
その気持ちをぐっと抑えて、言われた意味を考えた。
『毎年…、光一さんがいた頃は光一さんの家でクリスマスパーティーを開いていたんだ。
多分、その事だと思う。
俺も昔は親父たちに連れられて行ってたから……』
『そっか…、それに俺も呼ばれた訳か………』
『えっ………?』
驚きのあまり、繋いでいた手を離してしまう。
隼人の顔を見れば、苦笑いをしていた。
『俺も迎えに来るってさ。って事は俺もその拒否権なしのクリスマスパーティーとやらに呼ばれた訳だろ?』
そう言いつつ、苦笑いをしながら天井を仰ぐ隼人に俺はただ黙って見つめる事しか出来なかった…。
そのクリスマスパーティーに呼ばれたならその日に…決着をつければよいと思った。
でも、隼人まで呼ばれたとなれば…話は別だ。
隼人を危険に晒す事になるかもしれない。
隣を窺えば、隼人は天井を向いたまま瞳を閉じていた。
何を考えてるのか、思っているのか分からない。
でも、隼人は確実に来るだろう。
何か起こる事を確信しながら………
何かを変えようとしたのは、一体誰が初めだったんだろう?
本当に何かを守りたかったのは誰の想いなのだろう…。
気付きたいと願ったのは、叶えたいと願ったのは、一体誰が最初だったのだろう………?
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