変わらぬモノと変わりゆく者

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『矢吹君、服のサイズは大丈夫だった?』 『はい、嫌なくらいにピッタリっすね』 『それは良かった。竜も昔と違って格好良い服装が似合うお年頃になったんだね』 『もう高3だから』 『そうだな。そんなに月日が経ってたんだな』 俺達の前で止まった赤いスポーツカーはやはり光一さんの愛車で、俺達は中から呼ばれるがままに後ろに乗った。 それから光一さんが話し掛けてくる事に淡々と答えるだけの会話。 本人はあまり気にした様子もなく、俺は最近よく隼人が敬語を使えるようになったなという事に少し感心していた。 『さぁ、着いたよ。俺は車を止めてから行くから二人とも先に行っといて』 駐車場の前で先に降ろしてもらい、家の大きさを見て少し目を見開いた隼人を連れてパーティールームに向かう。 家の中に入れば、もうかなり人が来ているようで、みなそれぞれ挨拶などを交わしていた。 『隼人、絶対俺からはぐれるなよ』 『俺は子供か』 『こんな場所来た事ねぇからどうしたらいいか分かんねぇだろ?』 『…俺、無言でいいか?』 『挨拶されたら軽く微笑んで会釈でもしとけ』 『竜もそうしてんの?』 『俺は無愛想だから微笑むなんて出来るかよ』 そんな会話をしつつも、隼人の手をしっかり握り締めながら人波を掻き分ける。 スペースの空いているテラスを見つけそこ方に向かう。 テラス近くに空いた席を見つけたので、とりあえず隼人を引っ張りそこに座らせた。 『なんでこんなに人いんだよ』 『外国人が多いところを見ると、アメリカでの知り合いも来てるだろうな。まぁ俺達には関係ない金持ちの坊っちゃんやお嬢様ばかりだよ』 『竜も一応そうだろうが』 『俺が金持ちの坊っちゃんに見えるか?』 『ルックスはこん中でNo.1だけどな』 『金持ちに見えるって言われないだけマシだよ』 そんな会話をしていると、部屋の入り口に光一さんが現れたのか周りにいた人々が一斉に声をあげていた。
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