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『これ、うめぇ!』
『………………』
『あっ、これもやべぇ!』
『………………』
『この肉とか口ん中で溶けんだけど!』
『…隼人、少しは黙れ。周りから笑われてるぞ?』
『あぁ、別に構わねぇよ。だって俺、英語で何言われても分かんねぇし』
『いや、気にしろよ。余計に』
『じゃあ、竜訳して』
『…もうそのままでいい』
テーブルに一旦着いたと思いきや、またメニューが並ぶテーブルに向かい、席で待っていた俺の前に肉ばかりがのった皿が二つも置かれた。
そして今はそれを子供のように躊躇いもなくかぶりついている。
明らかに浮いてしまってる隼人の存在を周りの客達がチラチラ見ながら笑っていた。
゙あのボーイ、食い意地張りすぎよ゙
゙でも、意外にルックス良くない?゙
゙あいつ、本当に招待客なのか?゙
゙でも、隣に座ってる子なら私見たことある気がするわ゙
褒める声もあれば、もちろん罵る声もあり、これがすべて英語で話されているのが救いだなと思った。
『竜、サラダだけで足りんの?』
『肉ばっかりのお前よりマシだよ』
『ならサラダ分けてっちょ』
『自分んで取ってこい』
『いけず~』
『勝手に言ってろ』
見た目はいつもと違うのに、やはり中身までは変わらないらしい。
それがこのパーティー会場には異質でも、俺の心の中には温かさを燈す。
周りからなんと言われようと関係ないこの真っ直ぐさに昔も今も現にこうして救われているのだから…。
『なぁ、竜』
『ん?なんだよ』
肉に集中していたはずの隼人が視線だけで俺に合図する。
それに気付き、ハッと会場の方から目を離していた事に気付き視線を周りに向けると俺のすぐ側で堂山さんが客と挨拶を交わしていた。
視線を向けた瞬間にバチリと目が合い、一瞬胸が痛くなる。
そんな俺に気付いてか堂山さんは挨拶を済ませると笑顔でこちらに歩み寄ってきた。
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