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慌てて立ち上がろうとする俺を手で制する堂山さん。
それに従い、少し上げかけていた腰を下ろし、椅子に深く座り直す。
見上げる堂山さんの笑顔はいつにも増して爽やかな気もしたが、やはり光一さん同様作り笑いが上手なようだ。
『よく来てくれたね、竜君、矢吹君』
『招待して頂きありがとうございます』
『そんな今更固くならなくていいよ。今日は君の父も来てない事だし、力を抜いてパーティーを楽しんでくれ』
『そうさせてもらいます』
『もちろん、矢吹君もね』
『はい、お気遣いありがとうございます』
『じゃあ私は一旦これで。…また後でね、二人とも』
去っていく堂山さんとの距離が離れていくにつれて、段々と緊張が抜けていく。
意外にも隼人の方が落ち着いているように見え、少し驚く。
『お前、堂山さん苦手なんじゃねぇの?』
『苦手だけど、ここで隙なんて見せたらやられるだけだろ?んなもん喧嘩だって思ったら案外、相手睨んでた』
そう言って、いつものどうだと言わんばかりのドヤ顔で笑う。
それが頼もしいのか、ただの馬鹿なのかどちらも半分半分のような気がするがとりあえずは俺より隼人の方が今は本当の意味でこの場に対応しているなと思った。
それからパーティーは俺達などお構いなく着々と進んでいった。
日本帰国の報告とアメリカでの生活などをふまえた光一さんからの挨拶。
マイクを持ち、堂々と立ち振る舞う姿はまさに社長さながらだ。
その後に堂山さんからの挨拶もあり、それが終わればもう周りも段々と好きなように騒ぎ出す。
そうは言ってもやはり金持ち。
あくまで優雅にという事を忘れず、おしゃべりやダンスを楽しむ客がほとんどだ。
未だに最初から食べ続けている奴は隼人くらいしかいなかった。
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