変わらぬモノと変わりゆく者

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二人とも楽しそうに談笑し、こちらに意識があるとは思えない。 話したい気持ちはある。 決着をつけたい気持ちもある。 だが、それよりも他人に監視させているという事実に無償に腹が立った。 俺が逃げると思ってたんだよな… 信頼していたのに、信頼されていない事実。 それは紛れも無くお互いの関係に少しずつ溝を作る。 俺は今も昔も貴方を信じてついて来たのに……… なんとも言えない虚しさにテーブルの下で手を握り締めた。 『隼人…行こう……』 その言葉とともに二人で立ち上がり、ゆっくりと出口へと歩き出す。 隼人の後ろにいた男が動き、光一さんの元へ歩いて行くのが分かる。 俺達はただ無言でパーティーの中を、騒ぐ客達の間をくぐり抜け出口を出た。 出口で俺を見張っていた二人の横を通り過ぎたが特に何をされる訳でもなく、すんなりと通る。 玄関には向かわずに家の中へと進んでいく。 そんな俺について来る隼人の目も真剣そのものだ。 家の中に入って行くにつれて辺りは段々と静まり返っていく。 俺が向かうは光一さんの部屋。 二人で過ごした思い出が…1番詰まったあの部屋に……… 長い廊下には今は俺達の足音しか聞こえない。 後ろからつけられているのは知っているが、そこはお互い分かっているから触れない。 『とりあえずどうする?』 隼人が前を向いたまま俺に尋ねてくる。 『このまま光一さんの部屋に向かう。待っていれば…きっと来るはずだから』 『あのボディーガードは先に片付けとく?』 『馬鹿か。そんなやわな奴らを雇ったりしねぇよ』 『だろうな』 どこか楽しそうに話す隼人に眉間に皺が寄る。 そんな俺の顔を見て、今度は確実に隼人が笑った。 『なんだよ、急に』 『いや、なんか懐かしいなって』 『はっ…?』 『だって、なんかこんな喧嘩の話、最近二人でしなかったしさ。まぁ…俺がさせたくなかったからってのもあるけど、昔は毎日二人で喧嘩どうするか話し合ったりしてたよなって』
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