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~竜~
『なんか…殺風景な部屋だな』
『あぁ、そうだな……』
光一さんの部屋は本当に昔も今も変わらず、寂しい部屋だった。
久しぶりに再会した時もこの部屋に来たが、あの時にも感じた思い。
この部屋は寂し過ぎる……
自分の部屋も物はあまりないが、光一さんの部屋はもう人が住んでいる温かみを感じない部屋だった。
こんな部屋に毎日一人。
今再び過ごし始めたこの部屋で、彼は一体何を思って眠るのだろうか。
辺りを見渡していた隼人が窓際の壁に飾ってある写真の前で止まる。
それに気付き、俺も後ろから覗き込むようにして見てみると、飾られていた写真には若かりし頃の光一さんと俺が仲良く笑い合いながらピースをしている写真が飾られていた。
この間来た時には気付かなかった……
この頃はまだ、光一さんの事をただ純粋に好きだった頃。
まだお互いの関係が表面上だけでも壊れていなかった頃の写真だ。
懐かしいなとふと声が出そうになった時、後ろの扉が開く音が聞こえた。
俺はゆっくりと後ろを振り返り、相手を睨む。
『竜。そんな顔するなよ。なんか俺、嫌われたみたいな気分になるじゃん』
『光一さん。俺はもう…貴方を好きだった幼い頃とは違うんです』
『その写真は嘘の過去とでも言いたいの?』
『過去に囚われ過ぎてる貴方を…俺は助けてあげたかった』
『竜。それじゃあまるで俺とはここでお別れって言われてる気になるんだけど?』
『…、そう解釈してもらって構いません。俺はもう…貴方と一緒に立ち止まってあげる事は出来ないんです』
そう言い切り、真っ直ぐに光一さんを見つめるが、ただ苦笑いをされただけだった。
その目は俺を映しているようで、どこか遠くを見つめている気がした。
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