祈りの愛に結末を

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ゆっくりと中に入り、俺達と向かい合うように立ち、止まる。 後ろには誰もついておらず、ボディーガードもいないようだ。 無機質な扉の閉まる音だけが部屋に響いた。 『竜はさ…、そんなにその子が好きな訳?』 『光一さん……』 『特にこれと言って頭が良い訳でもないし、経済力をもってるような家柄でもない。どこからどう見たって竜に不釣り合いなのは目に見えてる』 『そんなもの目当てで隼人を好きになったんじゃない』 『まぁそうだろうね。でもさ…世の中そんな甘くないって竜が1番よく知ってるだろ?…それも男同士。君のお父様が許してくれるかな』 『それは光一さんとだって!』 『俺なら君をいろんな面でサポートしてあげられる。現に今だって君の傍に俺がいても何も言って来ないじゃないか。寧ろどうぞと言わんばかりの態度だ。そりゃあ恋人として付き合う事を認めろとまでは言えないけど、竜の傍にいていいですかと問えば必ずOKが返ってくると俺は思うけど?』 そう言って隣にいる隼人に笑いかける。 『それは矢吹君。君が1番よく分かっているはずだ。竜のお父様に忌み嫌われている事くらい』 『…そうっすね』 『隼人……』 『竜、そういう意味でも君は彼を苦しめているんだよ?今は学生だからとかまだ許してもらえるとか思っていても大丈夫かもしれないけど…もう時間がない事を竜は自覚すべきだ』 『それは一体どういう……』 『この際だから言ってあげるよ。なんで君のお父様が俺との仲を快く了解してくれているのか』 そう言って、とても楽しそうに笑う光一さんに一瞬、目には見えない恐怖を感じた。
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