祈りの愛に結末を

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『竜、君は黒銀を卒業したらカナダに俺と一緒に行く事が決まったんだ』 そう言って、ソファの方へ移動しゆっくりと腰掛ける。 俺は未だに言われた事の意味を理解出来ずに、固まっていた。 カナダ…? 俺が光一さんと一緒に……? 隼人を置いて…? 呆然と立ち尽くしていたが、急に頭に頭痛をおぼえ、倒れそうになったところを隼人が優しく抱き留めてくれた。 『竜、大丈夫か?』 『あぁ…、ごめん隼人』 返事をしたものの頭が未だに痛い。 これ以上、この話には触れたくないと身体が拒否しているのが分かる。 『とりあえず二人とも座って。竜達は誤解してる。俺は君達の敵のようで…1番の味方なんだから』 そう言ってソファを薦める光一さんに俺は首を振ったけれど、隼人が耳元で゙俺が隣にいるから゙と支えられるようにしてソファまで向かう。 座ってからも光一さんの方を見ることが出来ず、ただ隼人の手にそっと自分の手を重ねていた。 『そんな話、俺も竜も知らないんっすけど』 俺が口を開かないのを見て、隼人が光一さんに問い掛ける。 『そりゃそうだよ。だって君から竜を引き離すために竜のおじさんが考えた事なんだから。実を言うと、俺はアメリカから帰って来た時からこの話を聞いていた。だからいくら君が竜と仲良くしようと結局は俺の元に帰ってくると分かってた』 『それが本人の本当の意思じゃなくてもかよ!?』 隼人の怒りを含んだ叫びが部屋に響き渡る。 『あぁ。本当の本人の意思じゃないのかもしれない。…だけど俺は別に竜が手に入るならどんな手段でも構わないと思ったけど?君は違うのかい、矢吹君。誰かに竜を奪われたらそれでおしまいと潔く忘れる事が出来るのか?』 『…………………』 『無理に決まってるよな。なら君に否定される義理はないな』 そう言われ、光一さんを睨んでいた隼人だったが、ぐっと唇を噛み締めていた。
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