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『悔しいな…。こんなにも愛しいはずなのに……。悔しいよ、竜…。そんなに綺麗な過去じゃないだろ?忘れ去りたいくらいの過去のはずだろ…?俺はお前に恨まれていてもおかしくない。軽蔑されていてもおかしくない。それでもいいからって…、どんな形でもいいからって……。なのに……、初恋だなんて言うなよ。忘れたくないとか言うなよ。余計に苦しくなるじゃないか。…どうしてあの時に、離してしまったんだろうって……』
『それでも…、俺はこの先も……貴方を好きになった事を…後悔したとは思いません。貴方がいたから…、俺はこんなにも隼人を好きになれた。貴方がすべて教えてくれたから…。だからお願いします。…、今の俺をちゃんと見て下さい。俺が強くなれたのは…、光一さん。貴方と隼人がいてくれたおかげなんです』
もう涙は零れなかった。
でも、光一さんは…、何かを吐き出すように泣き崩れた。
嗚咽を堪える事なく、ただがむしゃらに泣く子供のように…
そんな光一さんに胸が締め付けられたが、腕を伸ばす事はなかった。
ギュッと隼人の手を握り締めていた…。
どれくらいそうしていただろう。
初めて見た光一さんの泣き顔に、何故か俺は安心していた。
この人も一人の人間なんだと。
泣く事を忘れてしまう事なんてやっぱり出来ないんだと。
光一さんもやっと落ち着きを取り戻したのか、涙を拭うとゆっくりとソファに身を沈めていた。
お互いまた無言が流れる。
しかし、その無言を終わらせた俺でもなく、光一さんでもなく…
隼人だった。
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