祈りの愛に結末を

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『俺は貴方が羨ましいです、光一さん』 『え…、?』 隼人の言葉に俺も驚く。 『俺にとっての初恋は紛れも無く竜です。ずっとずっと今でも好きだけど。…でも本当は、竜もそうならいいなってずっと思ってました。でも、違うんだろうなって気付いてもいました。それが光一さん…、貴方なのが俺は羨ましい…』 『どうしてそんなに…?』 『初恋って、どんなに大人なっても忘れないんですよ。それが実ろうがただの片思いに終わろうが…、絶対に忘れない。俺は貴方に負けるつもりはない。だけど、竜の中から貴方が消える事も一生ない。それは貴方も同じように…。それをどんなに願っても今更、俺が代わる事は出来ない。その人にしか分からない、大切な大切な思い出の一つだから…』 そういうと、どこか照れ臭そうに頭をかく隼人。 でも、光一さんに向き直る目は真剣そのものだった。 『だから初恋は諦めました。でも、今のこの時は…貴方には譲れない。どんなに憎まれようが、酷い目に合おうが俺は竜から離れるつもりはありません。それは俺の勝手だからです。…、だけど………』 そこで言葉を切る隼人に俺は不安な眼差しで見つめてしまう。 それに気付いた隼人がふと俺の方を向き、とても優しく笑った。 『俺が貴方を勝手に竜から遠ざける事も出来ないのは確か。それは竜の勝手だから。恋人は譲りません。でも、それ以外の形で…、竜が大好きだった頃の貴方で、竜の傍にいる事を…俺には拒否する権利はないんです。だって、それを望むのが竜なら俺は貴方を信じるしかない』 そう言って、ため息を吐きながらも無邪気に笑った隼人に俺は微笑みながら小さくありがとうと言った。
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