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~光一~
『はは、マジで情けねぇ俺』
二人が去った部屋の中、俺はソファにまた身を沈めた。
最後まで悪役でいるつもりだった。
本音なんて言ってやるつもりもなかった。
でも、気付いてた。
どんなに頑張っても、竜はもう振り向かない事くらい。
ずっとずっと見てきたから。
離れていた時でも、竜の成長を遠くから見守ってきたから。
『最後の悪あがきも子供だな、俺……』
いつまでも成長していない俺を、竜は昔と変わらない眼差しで見つめてくれた。
それが胸を締め付けて…
『自業自得だっつうの…、馬鹿が』
自分で言って、自分で悲しくなってしまった。
『もう終わったか、光一』
『…息子が泣いてるのに父親が最初にかける言葉がそれですか』
扉の方には顔を向けなかったが、勝手に中に入ってくる父親。
『ちゃんとお前の最後の遊びに付き合ってやっただろう?』
俺の隣に座り込み、煙草を取り出す。
『それはどうもありがとうございました』
『まぁ時には諦めも肝心だ。今すぐにとはさすがに私も言わない。…だが、お前も初恋は初恋らしく終わらせろ』
『…はい』
煙草の煙が目に滲みたとか勝手な言い訳をつけて、また泣いた。
そんな俺に何も言わずに隣で煙草を吸う父親に今日は少し感謝した。
じゃあな、俺の初恋…。
未だに感じるこの胸の痛みが消えるまで時間はまだまだこれから沢山あるのだと気が付いたら少しは笑えるような気がした…。
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